ユカリ(22)

ミケです。

ユカリと店の外で会うようになって驚いたことがある。

ユカリが酒呑みだったことだ。

ホテルに行く前に食事をするのだが、ユカリが頼むのはビールとかサワーを一杯だけだ。

私は食べながら呑む方なので、ユカリは私の頼んだ物をつまむのが常だった。

そんなもので足りるのか不思議であったが、別の機会で納得できた。

別れたあと、どこへ行くのか聞いたときだ。

「キャハハハ、新宿~」

新宿なんか行って何するの?

「呑むんだよ~」

私が顔色を変え、ナンパやホストの心配をすると

「大丈夫大丈夫!ゲイバーだから。安いし、変に絡んで来ないから。」

ゲイバー・・・

「楽しいよ?一緒に行く?」

誘われたが、大抵が23時近かったし、無駄遣いするお金もなかったので断った。

荒れた生活だった。

以前聞いた話と合わせると哀れで涙さえ出てくる。

義務教育を終えないうちから売春紛いの経験を重ね、札幌でスカウトされて吉原へ。

吉原での最初の目標は2,000万円貯めることで、それは意外とすぐに達成されたという。

しかし、計画がなかったからすぐになくなってしまったとも言っていた。

そこから貯める意欲も湧かなくなったユカリの生活が、あればあるだけ使うものになっていったことは想像に難くない。

昼間は吉原の待機室と個室の往復。

他のお嬢さんからも聞いたが、あれは精神的に参ってしまう、と。

待機室は嬢たちライバル同士が集まる部屋でもあるから、殺伐とした空気で支配されることもあろう。

嬢も様々な思いで来ているから、みんなで仲良く、なんて嬢全員が思っているわけがないのだ。

スタッフには売れるために媚を売るが、嬢に媚を売ってなんになる、という考え方もあろう。

お局様がいれば気も遣うし、気に入られなければイジメの対象になる。

そんなところでお茶を挽くことになろうものなら、間違いなく病むはずだ。

部屋持ちになるには売れなければならない。

待機するにも静かなバトルが続いているのだ。

接客にしても、当然嫌な客はいる。

話しかけても何の反応もない客。

こういう客が一番堪えるそうだ。

そんな客がいるのかと驚いた。

何を考えているのか・・・

正に針の筵に座っている心境だろう。

それが2時間続くのだ。

どんなSEXもコミュニケーションの末にあるものだと信じている。

それが出来ない客は、フーゾクで満足のいくサービスは受けられないであろう。

そして、あのウィークリーマンションに住み着いたのはいつからだろうか。

寝ることしかできない狭い部屋。

あんなところに帰ってきても気が休まるはずもなかった。

昼間に味わった嫌なことを忘れさせる、パァーっと騒げる場所が必要になるのは自然な流れだろう。

ユカリの場合それが酒であり、新宿だった。

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投稿者: mikenojo

♂貧乏サラリーマン。 身体障がい者。