ミケです。

電話を切ったのが1時か2時頃。
仕事が終わるのが早くて5時過ぎだろう。
たった3~4時間が長い。
仕事が終わるとすぐに電車に飛び乗った。
田原町のホテルからだった。
行ったことはないが、駅から降りたら電話で案内してくれる手筈だった。
ここか・・・
来る途中、引っ掛かっていたことがあった。
前回の『めぞん一刻』の話と類似している点だ。
もし、ユカリに一夜を共にする男がいて、その男が何らかの理由で別れも告げず帰った・・・
そんな話だったら・・・
私はそんな男の尻拭いをすることになるのか?
でも、放っても置けない・・・
複雑な気分だった。
確か、赤と青のコントラストをモチーフとした比較的きれいなホテルだった。
ここまで来たのだ、入ろう。
フロントには普段着の中年男性がいて、ユカリから聞いていた部屋番号をいう。
○○○号室の女の子に用があるんだけど。
「あぁ奥のエレベータで○階だよ」
あの・・ずっと一人なんですか?
恐る恐る聞くと
「ふん、今朝入ってずっと独りだよ」
上をチラッとみて中年男性は答えた。
ユカリの言葉にウソはないようだ。
よし、行こう。
コンコン
「誰?」
ドアを開けず、そう聞いてきた。
ミケ、だけど。
無言でドアが開いた。
いつもの明るさはなかった。
ユカリが奥に引っ込んだので、私も部屋に入る。
ホテルの部屋は勝手が違った。
ここで落ち着いていいのかわからなかったが、ベッドの脇にカバンを置いた。
ユカリは着ていたワンピースを脱ぎ始めた。
え?
「いいよ。ホテル代払えないから」
あ・・・そういうことか。
決して私を好きになってくれたというわけではなかった。
