ユカリ(12)

ミケです。

電話を切ったのが1時か2時頃。

仕事が終わるのが早くて5時過ぎだろう。

たった3~4時間が長い。

仕事が終わるとすぐに電車に飛び乗った。

田原町のホテルからだった。

行ったことはないが、駅から降りたら電話で案内してくれる手筈だった。

ここか・・・

来る途中、引っ掛かっていたことがあった。

前回の『めぞん一刻』の話と類似している点だ。

もし、ユカリに一夜を共にする男がいて、その男が何らかの理由で別れも告げず帰った・・・

そんな話だったら・・・

私はそんな男の尻拭いをすることになるのか?

でも、放っても置けない・・・

複雑な気分だった。

確か、赤と青のコントラストをモチーフとした比較的きれいなホテルだった。

ここまで来たのだ、入ろう。

フロントには普段着の中年男性がいて、ユカリから聞いていた部屋番号をいう。

○○○号室の女の子に用があるんだけど。

「あぁ奥のエレベータで○階だよ」

あの・・ずっと一人なんですか?

恐る恐る聞くと

「ふん、今朝入ってずっと独りだよ」

上をチラッとみて中年男性は答えた。

ユカリの言葉にウソはないようだ。

よし、行こう。

コンコン

「誰?」

ドアを開けず、そう聞いてきた。

ミケ、だけど。

無言でドアが開いた。

いつもの明るさはなかった。

ユカリが奥に引っ込んだので、私も部屋に入る。

ホテルの部屋は勝手が違った。

ここで落ち着いていいのかわからなかったが、ベッドの脇にカバンを置いた。

ユカリは着ていたワンピースを脱ぎ始めた。

え?

「いいよ。ホテル代払えないから」

あ・・・そういうことか。

決して私を好きになってくれたというわけではなかった。

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投稿者: mikenojo

♂貧乏サラリーマン。 身体障がい者。

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