ミケです。

一筆書いてもらうよ?
頷くと
「なんて書けばいい?」
とユカリは言った。
本名と住所、年齢と額面等、金銭消費貸借契約に必要な項目を入れた文書を作成する。
返済方法には通り一遍の文言を書かせる。
“毎月の返済額を支払わなかったら、一晩ミケに従う”
などと、今のひととき融資みたいなことを書かせようとは思わなかった。
それは公序良俗違反であって、契約自体が無効になるからだ。
なるべく普通の借用書にしたかった。
どんな場合でも有効に回収ができるように。
しかし、ここで重大なことを見逃していた。
有効に回収する手段を使う勇気や気力を私が持ち合わせていなかった。
それらを持ち合わせていなければ、借用書は単なる紙切れでしかない。
月にこれぐらいだったら払えるだろうと、生ぬるい考えで月1回の返済額も設定してしまった。
ユカリの本名もこの時初めて知った。
住所は保険証の住所と現在の住所を書いてもらった。
現住所にはこれから確認しに行くつもりだった。
書き終わったようだ。
