ミケです。

来たときはまだ明るかったが、出るともう暗かった。
食事は?
「いい」
頭を振った。
じゃ今住んでる所案内して。
歩ける距離だった。
ウィークリーマンションの狭い部屋を見せてもらった。
“人間はpixyの幅があれば生きていける”
そんなキャッチコピーを思い出させる細長い部屋だった。
ベッドはなく、敷きっ放しの布団の上にタオルケットやヘアアイロン、雑誌などが散らかっていた。
上がろうとすると必死で止められた。
当然だった。
いくら狭かろうと彼女の城なのだ。
恥を偲んで見せてくれていることを忘れてはいけなかった。
ごめん。
このあと、ホテルに誘うこともできたであろう。
しかし有効に契約を結ぶためにはそういうこともやってはいけないと思った。
いや、そもそもカラオケボックスなんて指定してくるか?という話だ。
当時の私はなんの疑いも持たなかったが、今考えると「えっ?!」と思ってしまう。
ユカリが10万円を借りるために行為を容認しているのか?
カメラも回っていてあまり最適な場所ではもちろんないのだが・・
大体、カラオケボックス=行為に及ぶスペースなんて公式はない。
そうだ。考え過ぎだろう・・・
じゃあこれ。
現金の入った封筒を渡す。
ユカリはその場で札束を数え出した。
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げ、最後に笑った。
その日は何もせずに別れた。
ふぅ・・・
疲れた。
だが、再び彼女から電話がかかってくるのはそう遠くない未来の話だった。
